会社設立の技術の身につけ方
その性質上組合員の責任の限度を出資の価額とすることが適当でない業務として政令で定めるものLLPの債権者に不当な損害を与えるおそれがある業務として政令で定めるもの政令で「組合員の責任の限度を出資の価額とすることが適当でない業務」として指定されたのは、いわゆる士業のうち、公認会計士、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、行政書士、海事代理士、税理士、社会保険労務士、および弁理士の業務です(令1条各号)。
前に述べたように、米国や英国では、むしろこれらの専門家の組織として活用するためにLLP制度が創設されたことや、業務執行において故意・重過失のあった組合員は第三者に与えた損害について無限責任を負うこと(法18条)に鑑みると、日本版LLPを士業で利用できないとすることには疑問もあります。
会計士や弁護士の業務過誤による被害者の保護は、保険制度の充実等の手段で図ることも可能なのですから、士業によるLLPの利用については今後も検討の余地があると考えます。
「LLPの債権者に不当な損害を与えるおそれがある業務」としては、宝くじ、競馬の馬券、競輪の車券等の購入が指定されました(令2条各号)。
制限業務の規定の効力は絶対的で、組合員は、この規定に違反して行われた業務を追認することはできません(法7条2項)。
また、違反があった場合は、有限責任性が否定されて、税務上のメリットも受けられないことになります。
(2)業務執行の決定LLPには、取締役会や社員総会などの機関を設置する必要はありません。
LLPの業務執行に関する意思決定は、原則として総組合員の全員一致で行うこととなります(法12条1項本文)。
LLPでは組合員全員が有限責任となることにより、民法上の組合に比べて債権者のリスクが高くなります。
しかも、内部自治原則は民法上の組合と同様に認められますので、業務運営の透明性の確保は困難です。
そこで法は、LLPに有限責任性を付与する対価として、原則として全組合員が業務を執行する制度を採用したのです。このような共同事業性は、各組合員が個性と能力を発揮しつつ、共通の目的に向かって主体的に共同事業に参画するというLLPの性質にも適しているといえます。
また、これによりLLPの事業の健全性が高まり、構成員課税制度を利用してLLPの損失を取り込むことだけを狙う、租税回避目的でのLLPの悪用を防ぐ効果も期待されています。
共同事業性を確保するために、法は、重要な意思決定については全員一致を要求しています。
LLPにおける意思決定の要件を整理すると以下のようになります。
総組合員の同意を要する事項イ組合の名称、事業内容、存続期間の変更、組合員の加入(法4条3項、5条1項)ロ組合員の損益分配の割合の決定・変更(法5条2項)ハ重要な財産の処分および譲受け(法12条1項。
ただし参照)二多額の借財(同上)原則として総組合員の同意を要するが、LLP契約の定めにより総組合員の3分の2の同意まで要件を軽減することができる事項イ重要な財産の処分および譲受けのうち、その価額が組合の純資産額か20億円のいずれか低いほうを下回る財産の処分および譲受け(当該処分または譲受けによる組合の財産上の損害の額が組合の純資産額から組合員による出資の総額(剰余金相当額を超える財産分配があった場合はかかる超過額を控除)を上回るものは)(法12条2項、規則5条1項1号)ロ多額の借財のうち、その価額が、組合の純資産額か20億円のいずれか低いほうを下回る借財(当該借財により組合の借入金の額が組合の純資産額か20億円のいずれか低いほう以上になるものは)(法12条2項、規則5条1項2号)原則として総組合員の同意を要するが、LLP契約の定めにより要件を軽減することができる事項上記および以外の事項なお、上記の各規定にかかわらず、LLPの運営をスムーズに行うために、日常反復して行われるような軽微な業務(常務)については、各組合員が単独で行うことができます(法14条)。
ただし、常務であっても、一部の組合員が独断で行ってLLPに損害を与える可能性があるので、組合員は、他の組合員がある常務を完了する前に異議を述べることによってその業務を中止させることができます(同条ただし書き)。
また、各組合員はLLPの業務を執行する権利を有しない場合でも、業務の状況を検査することができます(法56条、民法673条)。
これは、LLPの事業の共同性を理由として、各組合員が自己の利益を保全するために認められた権限です。
この規定に基づき、各組合員は、ある業務について直接業務執行に関与していない場合でも、その業務が適当に執行されているかどうか検査する権利を持つことになります。
上記のように、LLPにおいては、共同事業要件として、業務執行への全員参加と重要な意思決定の全員一致が強制されますが、これらの要件を満たせば、各組合員の業務分担や権限は柔軟に決定することができます(内部自治原則)。
業務分担や権限については、LLP契約に記載することもできますし、業務に関する規約などを別途設けることも可能です。
(3)業務執行の方法前述のようにLLPにおいては共同事業性の要請が強く、業務執行の決定に基づいて行う具体的な業務執行についても、組合員全員がこれに携わる権利を有し、義務を負うこととされています(法13条1項)。
LLPの業務執行の一部を委任することはできますが(同2項)、民法上の組合のように、特定の組合員にすべての業務執行権を委ねて他の組合員はその業務執行組合員を監視するという方法は認められません。
つまり、すべての組合員は、何らかの形でLLPの業務執行を行うことが必要なのです。
これらの規定に違反した場合は、LLP契約の成立が否定される可能性があるほか、組合員の所得税・法人税の課税の際に否認される可能性があります。
たとえば、ABCという3人がLLPを作る場合に、LLP契約の中で、「会計業務は組合員Aに、第三者とLLPが契約を締結する場合の締結権限をBに委任する」という規定を置くことは可能です。
組合員の多いLLPであれば、担当業務ごとの委員会制度を採用することも考えられます。
しかし、組合の業務執行を何も担当しない組合員が存在することは認められませんから、Cが関与する業務執行が何もない場合は、法律違反ということになります。
「組合の業務執行」とは、LLPのすべての業務執行を意味しており、契約締結などの法律行為のほか、契約締結のための交渉、事業計画の立案、資金の調達、帳簿や在庫の管理、従業員の指揮監督といったLLPの事業のために必要な事実行為も含みます。
組合の業務執行にどの程度携わることが必要かという問題は、LLPの業務内容や、LLPの業務全体における当該業務の位置づけ等を総合考慮して個別具体的に判断されることになります。
ただし、立法趣旨に照らすと、形式的に業務執行のわずかな部分にのみ携わり、実態としては何ら本質的な業務執行にあたっていないような場合や、LLPの業務の検査権があるというだけでは業務執行に関与したとはいえないと考えられます。
なお、業務執行の委任は、登記事項ではありません。
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